皿に残った魚の細かい身を食べてねこが興奮した。魚の脂がついた僕の指にかぶりついたのを、最初はやめろやめろと半笑いでからかっていたのだが、ねこの異常さを見て次第に恐ろしくなった。尋常じゃないほど歯茎を剥き出しにするので、唇がめくれて鼻に引っ掛かっている。いや、僕がふざけてめくったんだろうか、判然としない。直してもまた歯茎が出る。露になった牙は鬼の角みたいに太く、昔の人はこれを見て般若だとかを想像したんだと動揺のなか考えた。ねこは歯茎を剥き出すのを止めず、とうとう完全にめくれて顔全体がピンクに裏返った。耳のあたりまでくると皮が薄くなっており、血が滲み千切れそうで正に皮一枚になっている。直しても直しても元に戻らない。取り返しがつかなくなってしまった。恐ろしさのあまり目が覚めた。